はじめに
現代の葬送儀礼は1日で終了することは少ないことと思います。1日目に通夜、2日目に葬儀・告別式を行う・・・というのが一例です。訃報を受けて弔問する際はお香典を持参するのが一般的ですが、お香典はどのタイミングで渡すのがよいのでしょうか。
■通夜で渡すべきか?葬儀で渡すべきか?
かつては通夜は親族のみで営まれるものでした。したがって親族以外の弔問客は必然的に葬儀・告別式に参加することになるため、お香典を渡すタイミングで迷うことはありませんでした。しかし時代が移り変わり、通夜だけ出席する弔問客も増えたことにより、通夜時にお香典のやり取りをすることも珍しくなくなりました。これはライフスタイルの変化により、「日中は仕事で出席できないが、夜に営まれる通夜であれば出席できる」というケースが増えたためと思われます。
ここで、通夜・葬儀・告別式の違いについて整理してみましょう。
【通夜】・・・葬儀の前夜に遺族が集まり、故人と最後の時を過ごす場。古くは故人の近親者が夜通し故人のそばで大騒ぎをすることで故人のよみがえりを願う、あるいは故人が確かに亡くなっていることを確認する意味合いが有りました。
【葬儀】・・・故人を弔う宗教儀式。仏教的には故人をあの世へ引き渡し、成仏することを願うものです。
【告別式】・・・故人の友人や知人など、故人と親交のあった人が故人とお別れをする場となります。
お香典には宗教的な意味はなく、喪主や遺族に対しての金銭扶助が主目的となります。したがって、渡すタイミングは通夜でも葬儀・告別式でもどちらでもよいのです。
ただし、葬送儀礼は地域色が非常に強いものであるため、決められた慣習があればそれに倣うほうが間違いがないでしょう。傾向としては東日本では通夜のときに、西日本では葬儀・告別式のときにお香典を渡すことが多いようです。もし不安であれば、その地域に長く住んでいる年長者に相談するとよいでしょう。
■通夜と葬儀両方に出席する場合
通夜と葬儀、どちらか一方に参加する場合はお香典を渡すタイミングで悩むことはあまりないと思います。しかし、両方に参加する場合はどうでしょうか。
先述のとおり、お香典に金銭扶助が主目的であるためタイミングで渡しても差し支えありません。そこで、地域の慣習などの特別な理由が無い限りは通夜のうちに渡してしまうことをおすすめします。不測のアクシデントを回避するためにも、早めに渡してしまうほうが間違いがありません。
一方でやってはいけないのは通夜と葬儀それぞれでお香典を渡すことです。これはお香典を「2回」渡すことになり、不幸が重なることを連想されることからタブーとされています。「誰からいくら受け取った」という情報は台帳で記録されているため、通夜でお香典を渡しておけば葬儀の際に手ぶらでも問題ありません。
■遺族側の手伝いとして参加した場合
弔問客として参加するのであれば、通夜や葬儀の前に受付にお香典を渡せばそれで問題ありません。しかし、故人との付き合いがより深い場合には遺族側の手伝いとして参加することも考えられますが、このような場合はどのようにすべきなのでしょうか。 特に決まりはありませんが、一般弔問客と同様に受付に渡す以外には控え室などで喪主に直接渡すことなどが考えられます。お香典は「気持ち」なので、きちんと渡すことが出来れば問題ありません。
■時期が遅れてしまった場合
突然耳に入る訃報。しかしその中には日程の都合がつかずに葬儀に出席できない場合や、葬儀が終わってから訃報の知らせを受けた場合など、「お悔やみの気持ちはあるけど、お香典を渡すには遅いのでは?」と思ってしまう事もあると思います。
お香典は「気持ち」なので遅すぎるということはありませんが、お香典の性質を考えると49日までに渡すのがよいでしょう。宗派によるものの、死者は49日で成仏すると言われています。(浄土真宗など、死者は亡くなると直ちに成仏するとされる宗派もありますが、それでも49日を一区切りとする場合が多いようです。)
■渡してはいけないタイミングは
お香典は原則いつ渡しても問題ありませんが、ひとつだけ避けるべき時期があります。それは、通夜前の弔問時です。訃報を受けてすぐに喪服を来て弔問してはいけないことと同じ理由で、「あらかじめ準備をしていた」と解釈されかねないからと言われています。
■まとめ
お香典を渡すタイミングに特に決まりはありません。遺族の気持ちに配慮し、負担にならないかたちで渡すことが出来れば大丈夫です。