お通夜やお葬式に参列することがあることでしょう。
そんな時に持参するのが「お香典」。長く続く文化であり、参列者が持参するものとして一般常識とされています。
ここではそんなお香典について、そもそもどういったものなのか?どのくらいの金額を包めばよいかなど、知っていそうで知らないお香典のことを紹介していきたいと思います。
まず基本的な所から行きましょう。
香典とは「こうでん」と読みます。香典とは、仏式等の葬儀で、死者の霊前等に供える金品のことをさします。香料ともいいます。「香」の字が用いられるのは、香・線香の代わりに供えるという意味で、「典」とは霊前に供える金品の意味です。
通例、香典は、香典袋(不祝儀袋)に入れて葬儀(通夜あるいは告別式)の際に遺族に対して手渡されます。一般的には、訃報を知ったら、通夜または葬儀に持参します。香典は現金のまま、持っていきません。香典袋または不祝儀袋に入れます。(不祝儀とは、結婚などのお祝い事を祝儀というのに対して、めでたくないということを意味します。)
むかしは、突然の不幸で家族を亡くしてしまった遺族に対して、食料や品物を与えて、経済的に生活を助けました。香典の品が食料だったころは、葬儀にきてくれた人に出す食事に、それをあてたこともあるそうです。現在では、自宅で葬儀の参列者に食事をふるまうことはほとんどなくなりました。しかし、香典は食料や品物から現金に形を変えて、今も残っている助け合いの精神であるといえます。
香典の金額はいくらが適切か
亡くなった人との付き合いによって、香典の金額は変わります。血縁関係のある場合は、包む金額が多くなります。親の場合は10万円、兄弟姉妹は5万円、その他の親類は1万円が相場です。職場関係では、直属の上司の場合にも金額が高くなります。勤務先関係か友人であれば5千円が目安となるでしょう。付き合いの程度によってはもっと多く包む必要も出てきます。関係性によって、変動するものなので、ケースバイケースではあります。
また自分の年齢によっても変わります。一般的に、若いうちは低い金額でも認められます。しかし、年齢を重ねると高くなります。自分の社会的地位や収入によっても金額は変わってきます。学校や職場などの付き合いの場合、連名で香典を出すこともあります。連名のグループが大人数の場合には、数千円を出し合って、切りのいい金額にすることもあります。
隣人・近所では、日頃のおつき合いから3千円をつつむケースと5千円をつつむケースがあるようです。地域組合などで金額を統一している場合もあるので、周囲の人に聞いてみるのがよいでしょう。地域のしきたりなどによって、それそれ異なる特徴があるので、周囲に相談するなどして注意してください。
香典の表書きのしきたり
香典袋は、宗教によって表書きが異なります。正式には、表書き以外にも、のし袋そのものも種類が違います。喪主の宗教に合わせて、袋を用意して、それに合った表書きを記すようにしましょう。亡くなった知らせを受けたときに、喪主の宗教を聞いておくと、慌てずに用意することができるでしょう。
亡くなった方の宗教が分からない場合には、どんな宗教でも使える表書きがあります。「御霊前」はどの宗教でも使えて、通夜でも葬儀でも使えます。突然の通夜や葬儀で、喪主の宗教が分からない場合に使えるので便利です。
仏教では、葬儀が終わってから、亡くなった方の霊が成仏して仏になるという考え方から、四十九日の法要が過ぎると、表書きを「御仏前」「御佛前」にします。しかし、浄土真宗の場合には、人は死んでからすぐに仏になるという考えがあるため、はじめから「御仏前」「御佛前」を表書きにするようです。
神道では、御玉串料、御榊料、御神饌料と書きます。玉串とは、参拝者や神主が祭壇にささげるもので、榊など常緑樹の枝に紙垂をつけたもののことです。紙垂はむかしは木綿で作っていたそうです。神道の場合には、お通夜を通夜祭といいます。葬儀の後も、五十日祭や式年祭などが行われます。
キリスト教では、御花料、御ミサ料という表書きを使います。プロテスタントの葬儀は「御花料」、カトリックの葬儀なら「御ミサ料」という表書きにします。キリスト教では、人は亡くなった瞬間に、魂は天に召されると信じられています。したがって、「御霊前」では、葬儀の場所にまだ、霊魂が残っている状態を認めることになるため、あまり適切ではありません。
香典袋または不祝儀袋の種類
香典袋には種類があります。宗教によって表書きが異なるように、袋も異なります。
仏教では、蓮の絵の描かれた熨斗袋が使われます。絵のない白い袋でもかまいません。水引は白と黒の二色になっているか、銀のもので結びきりのものを使用します。弔事においては、不幸なことが二度と起こらないように、という意味をこめて、ほどけない結びきりの水引が使われます。
神道では、白無地の袋を使います。水引は、白一色のもの、白黒または銀のもので結びきりのものです。結びきりの一種で、あわじ結びも用いられます。両端をもって引くとさらに強く結ばれることから、末永く付き合うという意味があります。
キリスト教では、ユリの花や十字架などの絵が描かれた熨斗袋があります。白無地袋もつかえます。蓮の絵が描かれているものは仏教用なので使用しないように注意してください。水引のあるものを使う場合には、白黒または銀のもので、結びきりまたはあわじ結びを使います。
香典の渡し方・添える言葉
香典は通夜や葬儀で、会場にある受付で渡すことができます。通夜、葬儀どちらにも出席される場合には、通夜に出すことが多いです。香典袋はそのままで持つのではなく、袱紗(ふくさ)に包んで持っていくのがマナーだとされています。持ち運ぶ際に、香典が折れたり、曲がったりして、渡す前に乱れてしまわないためにも、袱紗に包む方がよいでしょう。
受付にきて、会葬者名簿に記入するときに一緒に渡します。その際、「このたびはご愁傷様でございます」とか、「このたびは突然のことでお悔やみ申し上げます」とか「ご霊前にお供えください」などといった言葉を添えて、渡すことが望ましいとされています。
しかし、受付では個々にゆっくりと時間を取ってあいさつする余裕はない場合がほとんどです。亡くなった方との関係性に応じての言葉かけは必要ですが、一礼するだけでよいと考えられます。大切なことは、故人を悼む気持ちをもって、丁寧に礼儀正しく接することです。けっして大声を出したり、歯を見せて笑ったりしないようにしましょう。
通夜・葬儀の服装
通夜・葬儀の服装においては、喪服を着用することが一般的です。
なるべく派手にならず、光沢が抑えられているものが良いとされています。また、アクセサリー等は外しておいた方が無難でしょう。
また、通夜の場合は特に、急に連絡が来ることがあります。そのため、喪服を用意できないという場合もあることでしょう。
そういった場合は、地味な平服を利用するといった方法もあります。
とはいえ、喪服を利用している人としていない人の数で言うと、喪服を利用している人の方が圧倒的に多いといった現状があります。平服ではどうしても目立ってしまいかねません。
最近では、注文してから翌日には届く「礼服・喪服レンタル」もありますので、そういったサービスを利用すると、通夜も葬儀も無難に参加することができることでしょう。
代理人として弔問
本来、弔問するべき人が都合がつかずに出席できなかった場合、代わりに配偶者や関係者が代理人として弔問することがあります。もし、代理人として弔問することになったら、受付で代理人であることを伝えてお悔やみの言葉を述べ、弔問に来られない事情を伝えます。記帳の際には、本人の名を書いて、下に「代理」として自分の名を書きます。
会社の上司の代理で、部下が弔問することになった場合にも、同じですが、記帳には会社の住所を記し、上司の名刺を持参するとよいでしょう。もちろん自分の名刺も用意しておく必要があります。自分の名刺は渡さなくても良いのですが、求められたら応じられるように持参しましょう。
郵送で弔問
本来は持参するのが礼儀ですが、遠方であるとか、仕事や家庭の都合上どうしても葬儀などに参列できないとき、訃報を後から知ったときなどに、郵送で香典を渡すことができます。先方に対して失礼には当たらないのですが、注意する点はいくつかあります。
まず、持参するときと同様に、のし袋を選び、表書きをします。それを現金書留専用の封筒に入れて送ります。ここで大切なポイントは、お悔やみの言葉を書いた手紙を添えることです。白い便せんに一枚だけ書き、一重の紙のシンプルな封筒にいれます。これは、二枚や二重にならないように、不幸が重なるという意味にならないようにという配慮です。
手紙の文章は、ご逝去に際しての悲しみや心情を述べ、弔問できないことのお詫び、ご冥福をお祈りするという言葉で結びます。ここで使ってはいけない言葉は、忌み言葉と重ね言葉です。忌み言葉は、「死」や「死」を直接的に連想させる言葉です。例えば、「急死」「死亡」「存命」「生きる」「自殺」などです。重ね言葉は、二回繰り返す言葉です。例えば、「かさねがさね」「たびたび」「しばしば」「ふたたび」「かえすがえすも」「くれぐれ」「いよいよ」「またまた」「再三」などです。
そのほか、気をつけることとしては、香典を受け取った遺族が名前だけで故人との関係が分かるとは限らないので、自分のことが分かるような記述をすることが配慮として必要になります。故人との関係をある程度わかるようなエピソードを記入しましょう。
送り先は、喪主の自宅あてです。葬儀会場に送ってしまうと、一日に何件も葬儀があり、たくさんの人が集まるなかで、喪主の手に確実に香典が渡るとはいえません。万が一、手に渡らなかった場合のリスクを考えると、自宅に送るのがベストでしょう。
郵送するタイミングとしては、葬儀の前後は避けたほうがいいでしょう。葬儀前後はとても忙しく、その時期に手間をかけることはご遺族に負担をかけてしまいます。ですから、葬儀の後、一週間から一か月の間に送るのが良いタイミングといえます。